太もも前面の筋肉は主に膝関節の伸筋群で、これらの膝を伸ばす筋肉は総称して大腿四頭筋と呼ばれます。
大腿四頭筋は、股関節の屈曲と膝関節の伸展に関与する二関節筋である大腿直筋と、膝関節の伸展にのみ関与する3つの広筋群(外側広筋・中間広筋・内側広筋)からなります。
よって大腿四頭筋全体としては股関節の屈曲と膝関節の伸展に作用する筋肉です。
大腿四頭筋の解説
大腿四頭筋は大腿直筋・外側広筋・中間広筋・内側広筋の総称です。
これら大腿四頭筋を構成する4つの筋肉の全てが骨盤から膝蓋骨に付着し、膝蓋靭帯を通して脛骨粗面に停止します。
大腿四頭筋は膝を伸ばす強力な筋肉で、大腿直筋だけ股関節と膝関節をまたぐ二関節筋なので股関節の屈曲にも関与します。
股関節屈曲時には大腿直筋の長さが短くなるため、膝関節の伸筋としての働きは弱まり、3つの伸筋(3つの広筋群)が主に膝の伸筋として機能します。
ジャンプ筋とも呼ばれる大腿四頭筋
ほとんどのスポーツや運動ではジャンプ能力は必要とされます。
大腿四頭筋は膝を伸ばす筋肉なので、ジャンプ能力に優れた人はこのジャンプ筋とも呼ばれる大腿四頭筋が発達していると言えます。
力強い下半身の動きを引き出すには大腿四頭筋とその拮抗筋であるハムストリングスの筋力とバランスが重要です。(一般的に大腿四頭筋はハムストリングスより25~33%強いのが理想とされています。)
また、大腿四頭筋はランニング中に減速するような運動でも働き、ジャンプから着地するときに身体を止める(支える、衝撃吸収をする)働きもあります。
大腿四頭筋は人体で一番大きな筋肉
大腿四頭筋は人体で一番大きな筋肉とされていますが、これは大腿四頭筋を構成する4つの筋肉を合わせて一番大きいと言っているので、一つの筋肉では大臀筋が一番大きな筋肉だと思います。
大腿四頭筋が動かす膝関節も人体で一番大きな関節で、膝関節は動きは単純ですが非常に大きな可動域を持っている関節です。
そのような大きな力が必要な関節を動かす筋肉なので、大腿四頭筋は強力なのですね。
大腿四頭筋を使うと代謝がよくなる?
よく言われることですが、大腿四頭筋を鍛えたり使うと代謝がよくなるといいます。
これは大きな筋肉ほどエネルギーを消費するので、間違いではありません。
大きな筋肉は他にもありますが、大腿四頭筋は膝関節という動きの大きな関節を動かす筋肉ですし、エネルギー消費の大きな筋肉とも言えます。
筋肉痛になりやすい大腿四頭筋
誰でも無理な運動や無理や動きをして、太ももの前面の大腿四頭筋が筋肉痛になるということは経験しているハズです。
特に山登りや階段を上る、ジャンプするといった動作で大腿四頭筋はよく使われますので、後述する大腿四頭筋の筋力強化やストレッチングで日常的にケアしてほしい筋肉でもあります。
大腿四頭筋を構成する4つの筋肉
大腿四頭筋の起始部や停止部はたくさんありますので、大腿四頭筋を構成する4つの筋肉の機能解剖を個別に記しておきます。
中間広筋は大腿直筋の下にあるので触診はできませんが、他の3つの筋肉は大腿前面で触診が可能です。
大腿四頭筋の表層
大腿四頭筋の一番表層にある筋肉が大腿直筋です。
大腿直筋だけは他の広筋群と違い、骨盤に起始部を持っているので、股関節と膝関節に作用する二関節筋です。
股関節屈曲時には大腿直筋は収縮して短くなり、膝関節の伸筋としての機能は弱まります。
起始部:
腸骨の下前腸骨棘、寛骨臼の後方上部の溝
停止部:
膝蓋骨上縁、膝蓋靭帯を通して脛骨粗面に停止
機能:
膝関節の伸展、股関節の屈曲
大腿四頭筋の外側
大腿四頭筋の外側にある筋肉が外側広筋です。
3つの広筋群は全て大腿骨から膝蓋骨、脛骨に付着するので、単体としては膝関節の伸展にのみ関与する筋肉です。
起始部:
大腿骨転子間溝、大転子の前方下方縁、殿筋粗面、大腿骨粗線の上部1/2、外側筋間中隔全域
停止部:
膝蓋骨の上縁外側、膝蓋骨を経て脛骨粗面に停止
機能
膝関節の伸展
大腿四頭筋の中間深部
大腿四頭筋の中間にある中間広筋は大腿直筋の下(深層)にあり触診はできません。
起始部:
大腿骨前面の上部2/3
停止部:
膝蓋骨の上縁中央、膝蓋靭帯を経て脛骨粗面に停止
機能
膝関節の伸展
大腿四頭筋の内側
大腿四頭筋の内側、内側広筋は膝蓋骨の上縁内側に停止部を持ちますが、筋繊維の方向が内側に向かって斜めであることから、膝蓋骨の安定性の確保にも関与します。
内側広筋の停止部(膝蓋骨上縁内側)付近の筋繊維は極端に内側方向に走行しているため、内側広筋斜繊維(VMO)とも呼ばれます。
VMOは膝関節の伸展最後の10~20°の可動域で最も強化される部位です。
起始部:
大腿骨粗線の全長、内側顆の稜線
停止部:
膝蓋骨の上縁内側、膝蓋骨を経て脛骨粗面に停止
機能
膝関節の伸展
大腿四頭筋の働き
大腿四頭筋は膝関節の伸展、股関節の屈曲の関与する筋肉です。
膝関節の伸展
大腿四頭筋の膝関節の伸展とは膝が曲がった状態から膝を伸ばす動きで、大腿前面の大腿四頭筋が主に膝を伸展させる筋肉です。
膝関節は蝶番関節に分類され、単純な動きしかできませんが可動域の大きな関節です。
一般的な膝関節の可動域は0°の伸展位から約140°の屈曲までです。
また膝関節が30°以上屈曲すると30°の内旋と45°の外旋が可能になります。
股関節の屈曲
大腿四頭筋の股関節の屈曲とは股関節の屈曲の動きは太ももが体幹に近づく動きで、大腿四頭筋や腸腰筋などの身体の前方に位置する筋肉が股関節の屈曲に関与します。
一般的に股関節の屈曲は約130°可能です。
大腿四頭筋の拮抗筋
太もも前面の大腿四頭筋が膝の伸筋群で、太もも後面のハムストリングスが膝の屈筋群です。
大腿四頭筋の拮抗筋として作用するハムストリングスも大腿四頭筋と同じように3つの筋肉の総称です。
大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋がハムストリングスを構成しますが、これら3つの筋肉は膝関節の屈筋群でもあり、3つとも股関節の動きにも関与する筋肉です。
機能強化
大腿四頭筋は力強い下半身の動きをするためには十分に発達していなければなりません。
垂直飛びなどは大腿四頭筋の筋力、パワーをテストするためのシンプルな方法です。
また、大腿四頭筋は筋力強化するだけでなく、十分な柔軟性がなければその力は十分に発揮できませんし、日常でもどのような運動でも重力や体重の負荷を受けている筋肉ですからストレッチングなど丁寧にセルフケアしたい筋肉でもあります。
筋力強化
大腿四頭筋はニーエクステンション(レッグ・エクステンション)という運動で集中的に鍛えることができます。
これはテーブルなどの台の上に座って膝から下を垂らし、そこから膝をゆっくり伸展させていく運動です。
膝が完全に伸びたら数秒間止めてゆっくりと戻りますが、マシーンやチューブなどで負荷を与えると更に鍛えることができる運動です。
またスクワットをゆっくりと行い、太ももの前面の大腿四頭筋に特に負荷がかかるようにしてもよい大腿四頭筋のトレーニングになります。
空気椅子で動かずに集中的に大腿四頭筋に負荷をかけても、大変効果的な大腿四頭筋のアイソメトリック(等尺性)のトレーニングになります。
ストレッチング
大腿四頭筋は膝関節の完全屈曲で伸ばすことができます。
立って片足の足先を持ち踵をお尻につけてもいいですし、正座をして上体を後方に倒していく運動でも両足の大腿四頭筋を同時に伸ばすことができます。
この時は、正座をして両手を後方につき、肘をつき、背中をつく、というように段階的に行っていくとよいでしょう。
膝の間を空けずに両膝をくっつけて行えば、更に大腿四頭筋をストレッチングすることができます。
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