意外と自分の体なのに曖昧な部位や知らない名称がついている部位は多いですね。
会陰(えいん)は解剖学的な名称でもあり、東洋医学のツボの名前でもあります。
今回はそんな会陰、会陰部について解説してみます。
解剖学的な会陰ってどこ?
会陰とはナイスなネーミングですが、これは元々は東洋医学からきている名称です。
東洋医学的には会陰というツボは一点ですが、解剖学的には一点ではなくある一定の部位のことを会陰、または会陰部といいます。
広義的な「会陰ってどこ?}

広義的な会陰の位置
解剖学的に「会陰ってどこ?」を解説すると、広義には左右の大腿と臀部で囲まれる骨盤の出口全体をさします。お尻の穴である肛門と生殖器(外陰部)の間が広義的な会陰の部位です。
狭義的な会陰とは?

狭義的な会陰の場所
狭い意味での会陰とは、骨盤を構成する左右の恥骨同士の結合部(恥骨結合)と左右の坐骨結節、尾てい骨(尾骨)を結ぶ三角形の部位のことです。
その会陰は前方部と後方部に分けられ、自分でも触診ができる骨盤の後方の骨(左右の坐骨結節)を結ぶ線で後方の肛門三角と前方の尿生殖三角とに分けられて解説されいています。
蟻の門渡りとも呼ばれることもある
男性の会陰は蟻の門渡り(ありのとわたり)という俗称でも呼ばれることがあります。
昔の言葉ですが、隠微な場所をユーモアに表した言葉ですね。
会陰切開
会陰切開(えいんせっかい)とは分娩のときに母体と赤ちゃんの安全を確保するため、あらかじめ会陰を小さく切開しておくことです。
必ずしも分娩のときに会陰切開を行うわけではありませんが、分娩時間の短縮や会陰の裂傷を予防するために行われる場合があり、その判断は分娩直前に行われることがほとんどです。
参考リンク(外部リンク):出産のトラブル(会陰切開など)
東洋医学での会陰ってどこ?
会陰という言葉は東洋医学のツボ(経穴)の名称からきています。
西洋学的な解剖学が入ってくる前に日本には東洋医学がありましたので、ツボの名称がそのまま解剖学に用いられました。
東洋医学でいう会陰とはツボの名前で、広い部位ではなく一点の部位を指します。
ツボとしての会陰

ツボとしての会陰
ツボとしての会陰とは任脈の最初の経穴です。
任脈とは体の正中線の前方の気の流れ(経絡)で気の流れ的には下から上に上がる陰経になります。
任脈が頭の上まで走行して、今度は督脈に代わり体の正中線の後方を上から下(陽経)に流れます。

任脈上のツボが会陰
この体の正中線の前後を流れる任脈督脈は気の流れ的には主要な流れで、他の12経絡(五臓六腑の名称がついている肺経・大腸経・胃経・脾経・腎経・膀胱経・肝経・胆経・心経・小腸経・心包経・三焦経)と合わせて正経14経とも呼ばれます。
その任脈の最初のツボが会陰ですが、「陰が会う」とは前後の陰(前方の尿、後方の糞)が会うという意味合いからきているようです。
参考リンク(外部リンク):会陰というツボってどこ?
施術に使われていたこともある
一般的には会陰は鍼や灸を施術するツボではありませんが、昔は会陰に鍼や灸などの施術を施す流派もあったようです。
現在では会陰への施術はまずおこなわれませんが、会陰マッサージなどもあり、また会陰を温めると冷え性にいいという噂もあります。
体の使い方には会陰というツボは重要
現在では鍼や灸などの施術にはまず使われない会陰ですが、身体を上手く使う(気を使う)、エネルギーを無駄なく使い最小の動きで最大の力を発揮するには会陰という部位を意識して体を動かすということは東洋的な武術などではとても重要です。
私も合気道や施術法を指導するときに「会陰を床に落としていくように」とか指導しますし、股関節のストレッチなどでも「会陰を床に近づけていくように」とか指導します。
これは会陰というツボが体の正中線上にあり、重心や体軸ととても深い関係があるためです。
(お腹の気の中心点は丹田(たんでん)といますが、この丹田の直下に会陰があるという感覚です)
重心や体軸をブラさず動くには会陰という部位を意識して体を動かすというのが、力学上理にかなっているんですね。
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