下腿後部、ふくらはぎは腓腹(ひふく)ともいい、大きなふくらはぎの筋肉は5つあります。
ふくらはぎの筋肉のほとんどは脛骨や腓骨に起始部を持ち、足首上部では細い腱となり踵骨や足趾の骨に停止します。
日常の動作でもほとんどのスポーツや運動でも、下腿の筋肉には激しい負担がかかるので、ふくらはぎの筋肉には急性および慢性の障害がよく発生します。
シンスプリントとは、走動作に関係した下腿前方の痛みを表す言葉ですが、ふくらはぎの深部の筋肉や筋膜などの炎症がシンスプリントを引き起こすと考えられています。
シンスプリントはふくらはぎの筋肉(底屈筋)をストレッチし、すねの筋肉(背屈筋)を強化することである程度は予防できる症状です。
ふくらはぎの筋肉
下腿に位置する足の動きに関与する筋肉は、その位置で分類するとその働きも理解がしやすいでしょう。
下腿後部のふくらはぎの筋肉が足関節を底屈させ、下腿前面にあるすねの筋肉が足関節を背屈させます。
浅部のふくらはぎの筋肉は腓腹筋とヒラメ筋で、深部のふくらはぎの筋肉は、後脛骨筋、長趾屈筋、長母趾屈筋でこの5つのふくらはぎの筋肉は全て足関節の底屈に働きます。
覚えておきたい5つのふくらはぎの筋肉
ここでは大きな5つのふくらはぎに筋肉について解説しますが、下腿側部の長腓骨筋や短腓骨筋は入れていません。
ふくらはぎの筋肉の一番表層にあるのが腓腹筋で、その下にヒラメ筋がありこの2つの筋肉は下方では共にアキレス腱となり踵骨に付着します。
ふくらはぎの筋肉の深部には、後脛骨筋や長趾屈筋、長母趾屈筋があります。
2つのふくらはぎの筋肉を下腿三頭筋とも言います
ふくらはぎの筋肉、腓腹筋とヒラメ筋はまとめて下腿三頭筋と呼ぶこともありますが一般的にはあまりなじみのない名称です。
下腿と足の骨格
ふくらはぎの筋肉は主に脛骨と腓骨から踵骨や足趾の骨に付着します。
最表層のふくらはぎの筋肉、腓腹筋だけは大腿骨に付着し、膝関節と足関節の二つに作用する二関節筋です。
脛骨は近位では大腿骨と膝関節を構成し、遠位では腓骨と距骨とで足関節(距腿関節)を構成します。
ふくらはぎの筋肉は踵骨や足趾の骨に付着しますが、母趾だけは他の四指に比べて骨が一本少なく、母趾の趾骨は基節骨・末節骨のみで他の四指の趾骨は基節骨・中節骨・末節骨になります。
ふくらはぎの筋肉の働き
ふくらはぎの筋肉の働きは主に足関節の底屈で、長趾屈筋や長母趾屈筋は足趾の屈曲、また足の内反にも作用する筋肉です。
ふくらはぎの筋肉の足関節の底屈
ふくらはぎの筋肉の底屈の働きとは、足が脛骨の前面から遠ざかる動きで主にふくらはぎの筋肉が関与します。
底屈は足関節(距腿関節)で起こる動きで一般的には約50°の底屈が可能です。
ふくらはぎの筋肉の足趾の屈曲
ふくらはぎの筋肉の足趾の屈曲の働きとは、つま先を足底の方向へ丸める動きです。
ふくらはぎの筋肉、長趾屈筋や長母指屈筋は足趾を屈曲させる筋肉で足関節を底屈させる筋肉でもあります。
母趾は長母趾屈筋が曲げ、他の四指は長趾屈筋が屈曲させます。
母趾の屈曲は2つの関節で起こり、母趾の中足趾節関節(MP関節)で約45°、母趾の趾節間関節(IP関節)で約90°の屈曲が可能です。
母趾以外の中足趾節関節(MP関節)では約40°の屈曲、近位趾節間関節(PIP関節)では約35°の屈曲、遠位趾節間関節(DIP関節)では60°の屈曲が可能です。
ふくらはぎの筋肉の内反
ふくらはぎの筋肉の内反の働きとは、つま先と足底が内側に向かい、足の外縁で立つような動きです。
ふくらはぎの筋肉のうち、後脛骨筋・長趾屈筋・長母趾屈筋が足の内反にも関与する筋肉です。
内反と外反は厳密には足関節の動きではなく、距骨下関節と横足根関節で起こる動きで、一般的に足は約20~30°の内反が可能です。
表層のふくらはぎの筋肉
ふくらはぎの筋肉の一番上は腓腹筋でその下にヒラメ筋が走行しています。
この2つの筋肉はともにアキレス腱となり、踵骨に付着します。
一番表層にあるふくらはぎの筋肉
最表層のふくらはぎの筋肉は腓腹筋です。
この筋肉は大腿骨から踵骨に付着する二関節筋で、足の底屈だけではなく膝の屈曲にも関与する筋肉です。
起始
腓腹筋の内側頭:大腿骨内側顆の後面
腓腹筋の外側頭:大腿骨外側顆の後面
停止
アキレス腱を経て踵骨隆起へ停止
機能
足関節の底屈、膝関節の屈曲
二層目にあるふくらはぎの筋肉
ふくらはぎの二層目の筋肉がヒラメ筋です。
ヒラメ筋は脛骨と腓骨からアキレス腱を経て踵骨に付着する筋肉で、足関節の底屈にのみ作用する筋肉です。
腓腹筋は膝が曲がっているとその底屈作用は弱まりますが、ヒラメ筋は膝の上体に関係なく足関節が底屈するときは常に働きます。
起始部
脛骨と腓骨の後面上部1/3
停止部
アキレス腱を経て踵骨後面(踵骨隆起)に停止
機能
足関節の底屈
深部のふくらはぎの筋肉
ふくらはぎの深部には後脛骨筋、長趾屈筋、長母指屈筋が走行していますが、3つの筋肉とも底屈と内反に作用する筋肉です。
ふくらはぎの深部の筋肉、後脛骨筋は足の底屈と内反に作用する筋肉です。
起始部:
骨間膜の後面上部1/2とそれに隣り合う脛骨と腓骨の部分
停止部:
舟状骨と3つの楔状骨の骨底内側、第2~5中足骨底
機能
足関節の底屈、足の内反
ふくらはぎの深部の筋肉(長趾屈筋)は母趾以外の足趾の屈曲と、足関節の底屈、足の内反に関与する筋肉です
長趾屈筋の起始部:
脛骨後面の下方2/3
長趾屈筋の停止部:
第2~第5趾の末節骨底
長趾屈筋の機能
第2~第5趾の屈曲、足関節の底屈、足の内反
ふくらはぎの深部の筋肉(長母趾屈筋)は母趾の屈曲、足関節の底屈、足の内反に関与する筋肉です。
起始部:
腓骨後方下方2/3
停止部:
母趾の末節骨底
機能
母趾の屈曲、足関節の底屈、足の内反
障害の多いふくらはぎの筋肉
ほとんどのスポーツや運動で下腿の筋肉には激しい負担がかかるので、ふくらはぎの筋肉には急性および慢性の障害がよく発生します。
走動作に関係した下腿前方の痛みをシンスプリントといますが、ふくらはぎのヒラメ筋内側部や後脛骨筋、前脛骨筋が関与していると考えられています。
筋膜の炎症がシンスプリントを引き起こすと考えられていますが、シンスプリントはふくらはぎの筋肉(底屈筋)をストレッチし、背屈筋を強化することである程度は予防できる症状です。
またふくらはぎの筋肉がつる、というのは腓腹筋やヒラメ筋の急性筋痙攣です。
ふくらはぎの筋肉がつってしまったときは、自動的にでも他動的にでも足関節を背屈することで和らげることができます。
アキレス腱は下腿三頭筋を踵骨に付着させている非常に強力な腱ですが、ここもまた完全断裂という重大な損傷を受けることがあります。
血液の循環にも影響するふくらはぎの筋肉
ふくらはぎは第二の心臓とも呼ばれますが、これは滞りやすい静脈の血液がふくらはぎの筋肉のポンプの作用によって心臓に戻りやすくなるためです。
よってふくらはぎの筋肉に柔軟性がなかったり、筋力不足だと滞りやすい静脈の血液を心臓に戻す作用が弱くなり、全身の循環不良を招いてしまいます。
これは重力があるために起こる問題ですが、積極的にふくらはぎの筋肉を鍛えたり柔軟性を回復することで解決できる問題です。
機能強化
ふくらはぎの筋肉は日常でも負荷のかかる部位なので、歩行や日常の動作でも十分に使っているので、筋力強化よりもストレッチングなどで柔軟性を養いたい筋肉です。
筋肉強化
ふくらはぎの筋肉、足関節の底屈筋を鍛える有効なエクササイズがあります。
ヒール・レイズ、カーフ・レイズと呼ばれる運動ですが、台の端などでつま先だけで立ち、踵を引き上げつま先立ちになりゆっくり戻る動きを繰り返す運動です。
これにダンベルやバーベルを持ち負荷をかけて行えば、更にふくらはぎの筋肉を鍛えることができます。
ストレッチング
ふくらはぎの筋肉は主に底屈の働きをするので、その反対の動き(背屈)でふくらはぎの筋肉をストレッチングすることができます。
どのような背屈のやり方でもふくらはぎの筋肉を伸ばすことができますが、簡単に行うならば壁から1メートルほど離れて立ち、両手で壁に手をついて壁の方に上体を倒していくことで特にふくらはぎの筋肉をストレッチングすることができます。
この時、膝を完全に伸ばして行うと腓腹筋が、膝を若干曲げて行うとヒラメ筋がよりストレッチングすることができます。
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