鵞足部(がそくぶ)とは一般的には聞きなれない言葉だと思いますが、人体の部位の名称です。
鵞足部はすねの骨である脛骨の上方内側部分のことをいいます。
ここには3つの筋肉の付着部があり、その部分がガチョウの足に似ていることから鵞足と名付けられています。
その鵞足部ですが筋肉の柔軟性不足などによる、付着部や筋膜の炎症「鵞足炎(がそくえん)」なども生じやすい部位です。
鵞足部の解説
鵞足とはガチョウの足のことですが、まず読めないし、書けない言葉ですね。
解剖学は古い言葉で語られるため、自分の体のことなのに理解が深まらない原因の一つです。
鵞足部とはすねの骨、脛骨の上部の内側です。
問題の多い脛骨に付着する筋肉
脛骨は近位で大腿骨と膝関節を構成し、遠位では腓骨と距骨とで足関節(距腿関節)を構成しています。
体重はほぼ脛骨のみを経て、遠位の関節に伝わります。
鵞足部のみならず、脛骨には太ももの筋肉(股関節を動かす筋肉や膝を動かす筋肉)、ふくらはぎの筋肉(足首を動かす筋肉)が付着しているので、常に激しい負担を受けている下腿の筋肉が炎症を起こしたり、肉離れなどを生じやすい部位です。
鵞足部の由来
鵞足部とは3つの筋肉の停止部(筋肉の遠位の付着部)がガチョウの足に似ていることから名づけられました。
鵞足部に付着する3つの筋肉
鵞足部には縫工筋、薄筋、半腱様筋が停止しています。
この3つの筋肉は膝関節の屈曲、膝を曲げる動きに関与し、股関節の動きにも関与します。
膝を曲げる動作や股関節を動かす動作で負担の掛かりやすい筋肉なので、十分な強さや柔軟性がないと、筋肉の停止部(鵞足部)が強く引っ張られて炎症などを起こしやすい筋肉です。
特に大腿後面のハムストリングスを構成する半腱様筋は膝を屈曲させる強力な筋肉ですが、柔軟性がないと膝を痛めてしまいかねません。
鵞足部に停止する筋肉
鵞足部に停止する縫工筋
鵞足部に停止する縫工筋の膝と股関節を動かす力は弱いものですが、膝関節の安定性を保つには欠かせない筋肉です。
縫工筋が十分に発達していなかったり緊張していると、膝関節を引っ張り膝が内側に傾いてしまい、それが膝の痛みや0脚やX脚の原因ともなりえます。
起始部
腸骨の上前腸骨棘
停止部
脛骨粗面の内側縁(鵞足)
働き
股関節の屈曲、外転、外旋
膝関節の屈曲
鵞足部に停止する薄筋
鵞足部に停止する薄筋は股関節と膝関節をまたぐ二関節筋です。
薄筋は恥骨を起始として、脛骨の内側部(鵞足)に停止しますが、薄筋の主な働きは股関節の内転と内旋で、膝関節の屈曲の補助にも関与します。
起始部
恥骨下肢の前方内側縁
停止部
脛骨粗面の内側
働き
股関節の内転と内旋、膝関節の屈曲の補助
鵞足部に停止する半腱様筋
鵞足部に停止する半腱様筋は股関節と膝関節をまたぐ二関節筋です。
股関節の伸展と膝関節の屈曲が同時に行われたときは、半腱様筋は大きな力を発揮しませんが、どちらかの関節でのみ動きが生じるときには非常に大きな力を発揮します。
半腱様筋、半膜様筋、大腿二頭筋を総称してハムストリングスと呼び、膝を曲げる主働筋であり、股関節の伸展にも関与します。
起始部
坐骨結節
停止部
脛骨粗面の内側(鵞足部)
機能
股関節の伸展、膝関節の屈曲、股関節の内旋、膝関節の内旋
鵞足炎とは?
鵞足炎(がそくえん)とは鵞足部に付着する3つの筋肉の停止部の炎症です。
膝を動かす運動後、膝関節の内側の痛みとして生じることが多いですが、その原因は鵞足部に付着する筋肉の柔軟性不足です。
鵞足部に付着する筋肉に柔軟性のない状態で無理な運動、特に膝関節に負担がかかるような運動をすると鵞足部が無理に引っ張られて炎症を生じさせます。
前屈して手が床につかない人は要注意
立ってでも座ってでも膝を伸ばして上体を前屈して、床や足先に手が届かない方は、明らかに鵞足部に付着する筋肉(半腱様筋・縫工筋・薄筋)やハムストリングスの柔軟性不足です。
このような方は、膝関節に負担をかけやすいので、少し無理な運動をしただけで鵞足炎などを引き起こしやすいので、ストレッチングなどで柔軟性を養いましょう。
鵞足炎予防にはストレッチングが重要
鵞足部に付着する筋肉をストレッチングするには、膝関節を完全伸展させ(膝を伸ばして)股関節を屈曲(上体を前屈し上体を大腿に近づける)します。
この時に股関節を少し外旋させておくと、より半腱様筋をストレッチングすることができます。
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