左右の腰背部を広く覆うように走行する広背筋は肩関節を内旋させながら内転させる強力な筋肉で、さらに肩関節の伸筋群の中で最も重要な筋肉です。
広背筋の解説
脊柱(第6胸椎~第5腰椎)、肋骨、骨盤(仙骨、腸骨)から上腕骨に付着する広背筋は、肩関節を内旋・内転・伸展・水平伸展させる力強い筋肉です。
肩関節を動かす筋肉は広背筋や大胸筋などの大きな力を発揮する外在性の筋肉と、ローテータ・カフ(回旋腱板)を構成する棘上筋や棘下筋、肩甲下筋や小円筋などの小さな力を発揮する筋肉に分けられます。
起始部:
第6胸椎~第5腰椎の棘突起、仙骨後面、腸骨稜後面、第10、11、12肋骨
停止部:
上腕骨小結節稜
機能:
- 肩関節の内転:上腕骨が外転位から体幹、正中線に向かう動き
- 肩関節の内旋:上腕骨がその軸を中心に内側に向かう動き
- 肩関節の伸展:屈曲している上腕骨が後方に向かう動き
- 肩関節の水平伸展:上腕骨が水平面上に胸部から離れ、後方に向かう動き
広背筋の起始部
広背筋の起始部は体幹の骨格に広範囲にわたり存在し、広背筋は第6胸椎~第5腰椎の棘突起、仙骨後面、腸骨稜後面、第10、11、12肋骨に付着して収縮することにより、力強く上腕骨を動かします。
広背筋の停止部
広背筋の停止部は上腕骨の小結節稜で、肩関節を動かす筋肉では広背筋の他に大円筋も停止部を持ちます。
神経支配
胸背神経(C6・7・8)
広背筋の触診
広背筋は腰背部の最表層の筋肉で、上腕骨の付け根から体幹の後部外側の広い範囲で触診することができます。
広背筋の働き
広背筋は肩関節を力強く動かす筋肉で、肩関節の内転・内旋・伸展・水平伸展に作用する筋肉です。
肩関節の内転
広背筋の肩関節の内転とは、上腕が体幹に向かって近づいていく動きです。
肩関節は多方向に動き大きな可動域を持つ関節で肩甲骨の動きと対になって動くので、肩関節の動きを理解するには肩甲帯の動きも把握しなければなりませんが、単に肩関節の動きを上腕骨の動きとして理解するのも混乱を避けるためにいいかもしれません。
肩関節の内転に伴い、肩甲帯(肩甲骨)は下方回旋し、一般的に肩関節は体幹の前面で75°の内転が可能です。
烏口腕筋、肩甲下筋、大円筋、広背筋、大胸筋(下部)などが肩関節を内転させる大きな筋肉です。
肩関節の内旋
広背筋の肩関節の内旋とは、上腕がその長軸を中心に内側に向かう動きで、肩甲帯(肩甲骨)は外転します。
一般的に肩関節は70~90°の内旋が可能で、肩関節を内旋させる大きな筋肉には広背筋・大胸筋(下部)・三角筋(前部)・肩甲下筋・大円筋などがあります。
肩関節の伸展
広背筋の肩関節の伸展とは、上腕骨が後方に向かう動きで、肩甲帯(肩甲骨)は下制か下方回旋をします。
肩関節は一般的に40~60°の伸展が可能で、肩関節を伸展させる大きな筋肉には広背筋・大胸筋(下部)三角筋(後部)・小円筋・肩甲下筋・大円筋などがあり、肩関節の伸筋群の中でも広背筋の力は最も強いものです。
肩関節の水平伸展
広背筋の肩関節の水平伸展とは、上腕が水平な位置において胸から離れていく動きで、それに伴い肩甲帯(肩甲骨)は内転します。
一般的に肩関節は45°の水平伸展が可能で、肩関節を水平伸展させる大きな筋肉には、広背筋、三角筋(後部)、棘下筋、小円筋などがあります。
機能強化
肩甲下筋や大円筋などは広背筋とともに働くので、広背筋の機能強化はこれらの筋肉の機能強化にもなります。
同じ動きでも意識する部位を変えるだけで、違う筋肉を鍛えることもできるので、広背筋を集中的に機能強化したい場合は広背筋の走行や起始部や停止部を意識してトレーニングを行うのが望ましいです。
筋力強化
広背筋は懸垂やロープクライミングなどの運動で、腕を真っすぐに伸ばした状態から体を引き付ける動作でよく鍛えられます。
また、平行棒を使ったディッピングやダンベルやバーベルを用いたローイングやプル・オーバーなども広背筋を鍛えるよいトレーニングになります。
ストレッチング
広背筋はその働きの逆の動きでストレッチングが可能で、大円筋とともに肩関節を90°外転位で、さらに外旋することでストレッチされます。
この方法は肩関節を180°の外転位を維持しながら外旋し、そこから体幹を反対側に側屈回旋させることで、さらに広背筋をストレッチングすることができます。
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