小胸筋は胸郭の前方にある筋肉で肩甲骨を動かす筋肉です。
小胸筋のように肩甲帯を動かす筋肉は上腕骨には付着していないので、肩関節の動きには直接には関与していません。
小胸筋のような肩甲骨(肩甲帯)を動かす筋肉と肩関節を動かす筋肉は分けて考えると、肩甲骨の動きや肩関節の動きは理解しやすくなります。
小胸筋の解説
小胸筋は第3・4・5肋骨の前面から肩甲骨の烏口突起に付着する筋肉で、肩甲骨を動かす筋肉です。
肩甲骨の動きは複雑なので小胸筋の働きも複雑です。
小胸筋は肩甲骨の回旋を起こさずに肩甲骨を外転させるとき前鋸筋と一緒に働き、この働きは腕立て伏せのように腕を前方に突き出す動き、肩甲骨の外転だけを行う運動です。
肩甲骨を前鋸筋が外転させながら上方に回旋させるのに対し、小胸筋は肩甲骨を外転させながら下方回旋させます。
小胸筋と前鋸筋が同時に働くことで、上方回旋と下方回旋の働きは相殺された結果、単純な肩甲骨の外転という動きが生じます。
小胸筋の起始部
第3・4・5肋骨の前面
小胸筋の停止部
肩甲骨の烏口突起
小胸筋の働き
- 肩甲骨の外転
- 肩甲骨の下方回旋
- 肩甲骨の下制
小胸筋の起始部
小胸筋の起始部は第3・4・5肋骨の前面です。
扁平骨に分類される肋骨は12対24本あり、小胸筋が付着する上部の肋骨の7対は真肋(しんろく)・脊椎胸骨肋骨とも呼ばれます。
肋骨は胸椎から胸骨までつながりますが、胸骨への接合部分は肋軟骨という軟骨の組織になっています。
小胸筋の停止部
小胸筋の停止部は肩甲骨の烏口突起という部位です。
肩甲骨は扁平骨に分類されますが、肩甲骨の前面は複雑な形をしていて、鎖骨と肩鎖関節、上腕骨と肩関節を構成します。
肩甲骨の動きを理解するには肩甲骨の各部位の名称を知っておくと、小胸筋のように肩甲骨を動かす筋肉も理解しやすくなります。
小胸筋の神経支配
内側胸神経(C8、T1)
小胸筋の触診
小胸筋は大胸筋に覆われているので触診は困難ですが、肩甲骨を引き下げた時に烏口突起の下で触れることができます。
小胸筋の働き
小胸筋は肩甲骨を動かす筋肉で、肩甲骨の外転・下方回旋・下制に作用する筋肉です。
外転
小胸筋の外転の働きとは、肩甲骨の下角を浮き上がらせながら、肩甲骨を外転させる動きです。
肩甲骨の外転には前鋸筋や小胸筋が関与します。
下方回旋
小胸筋の下方回旋とは、肩甲骨の外転に伴い下方回旋させる動きです。
肩甲骨の下方回旋の動きとは肩甲骨が下方と内側に動くことで、肩甲骨の下方回旋には菱形筋(大菱形筋・小菱形筋)、小胸筋などの筋肉が関与します。
下制
小胸筋の肩甲骨の下制の働きとは、肩甲骨の上方回旋に伴い肩甲骨を引き下げる動きです。
肩甲骨を下制させる筋肉には僧帽筋、小胸筋、鎖骨下筋などがあります。
機能強化
小胸筋は肩甲骨が上方回旋から下方回旋するときに最もよく使われ、肩甲骨を挙上しながら内転位に持っていくことでストレッチングが可能です。
筋力強化
ディッピングで体を上方に押し上げるときに小胸筋はよく使われますので、ディッピング(両腕で手すりにつかまり、身体を押し上げる運動)や腕立て伏せでもよく鍛えることができます。
ストレッチング
小胸筋は肩甲骨の挙上と内転で伸ばすことができますが、ウォール・プッシュ・アップという運動(部屋の角に立ち、両腕を肩の高さにあげ2つの壁に圧しつける運動)もよい柔軟性向上のトレーニングになります。
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