小菱形筋は大菱形筋とあわせてただ菱形筋として解説されることも多いのですが、大菱形筋の上部に小菱形筋はあり、肩甲骨を動かすその働きも同じものです。
小菱形筋の解説
小菱形筋は大菱形筋の上にあり、文字通り菱形の形をしている筋肉です。
小菱形筋は僧帽筋に覆われていて触診はできない筋肉で、第6~第7頚椎(もしくは第7頸椎~第1胸椎)の棘突起から肩甲骨内側縁上部に付着する筋肉します。
小菱形筋は肩甲骨(肩甲帯)の内転、下方回旋、挙上に働きますが、肩関節が外転するとき(腕が外側に向かって動くとき)肩甲骨を内転位に保つ役割も持ちます。
肩甲骨を多方向に動かす小菱形筋などの肩甲骨を動かす筋肉を理解するには肩甲帯の構造と動きを理解する必要があります。
小菱形筋は懸垂のような運動で特に力を発し、ただ鉄棒にぶら下がっている状態では肩甲骨は上方回旋していますが、懸垂をするときは肩甲骨は小菱形筋と大菱形筋により下方回旋されつつ、脊柱に向かって引っ張られます(肩甲骨の内転)。
また小菱形筋・大菱形筋と僧帽筋が同時に働くと、肩甲骨はわずかに挙上しながら内転します。
大菱形筋の起始部
第6~第7頚椎(もしくは第7頸椎~第1胸椎)の棘突起
小菱形筋の停止部
肩甲骨内側縁上部1/3
小菱形筋の働き
小菱形筋は大菱形筋とともに働き、肩甲骨の内転、下方回旋、挙上に作用します。
- 肩甲骨の内転:脊柱に向かい、わずかに上に引っ張られながら内側へ向かう動き
- 肩甲骨の下方回旋:肩甲骨を上方回旋から下方回旋させる動き
- 肩甲骨の挙上:肩甲骨の内転を伴うわずかな上方への動き
起始部
小菱形筋の起始部は第6~第7頚椎(もしくは第7頸椎~第1胸椎)の棘突起です。
脊柱は一つ一つの椎骨が椎間板を挟み積み重なっていますが、椎骨の横の出っ張りの横突起、後方ぼ出っ張りの棘突起には小菱形筋や大菱形筋のような肩甲骨を動かす筋肉や脊柱を動かす筋肉が数多く付着しています。
停止部
小菱形筋の停止部は肩甲骨内側縁の上部1/3です。
小菱形筋のように肩甲骨を動かす筋肉を理解するには肩甲骨の上角や下角、内側縁、肩甲棘や肩峰などの骨格の目安を理解しておくと役立ちます。
神経支配
肩甲背神経(C4・5)
小菱形筋の触診
小菱形筋は僧帽筋に覆われていて触診はできません。
小菱形筋の働き
小菱形筋のように肩甲帯にある筋肉は肩甲骨を動かす筋肉だと理解してください。
小菱形筋は大菱形筋とともに肩甲骨の内転、下方回旋、挙上に働く筋肉で、肩甲骨を安定を維持する(位置を保つ)役割も持ちます。
肩甲骨の内転
小菱形筋の肩甲骨の内転の働きとは肩甲骨が脊柱の方向に近づく動きで、主に大菱形筋や小菱形筋、僧帽筋、肩甲挙筋が肩甲骨を内転させる筋肉です。
肩甲骨の下方回旋
小菱形筋の肩甲骨の下方回旋とは肩甲骨が下方と内側に動くことで、大菱形筋や小菱形筋、小胸筋などの筋肉が関与します。
肩を落とす動き、肩甲骨を引き下げるだけの動きは肩甲骨の下制と呼ばれ、肩甲骨の下方回旋では下制とともに更に肩甲骨が内側に向かいます。
肩甲骨の挙上
小菱形筋の肩甲骨の挙上とは肩をすくめる動きで、肩甲骨を上方に引っ張り上げる動きです。
肩甲骨の挙上には大菱形筋、小菱形筋、僧帽筋、肩甲挙筋などが関与します。
機能強化
小菱形筋の走行する背骨と肩甲骨の間はコリやすい部位で、緊張が抜けにくい部位とも言えます。
小菱形筋のような肩甲骨・肩甲帯を動かす筋肉は日常でも上肢を動かすことによく使われますので小菱形筋のような筋肉は上肢の力を使う運動選手なら積極的な筋力強化も望ましいですが、一般的な方はストレッチングのような柔軟性を向上させるトレーニング、筋肉の緊張を取るエクササイズが望ましい筋肉です。
筋力強化
小菱形筋は懸垂の運動で効果的に筋力強化をすることができます。
ストレッチング
小菱形筋は肩甲骨の引き下げたまま(下制を維持したまま)、他動的に肩甲骨を外転させることでストレッチングが可能で、肩甲骨を上方回旋させてもストレッチングすることができます。
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