上腕骨外側下部から前腕橈側を走行し橈骨遠位に付着する腕橈骨筋は、肘関節の屈曲と前腕の回内、回外に働く筋肉ですが、前腕の状態により発揮できる力が変化する筋肉です。
腕橈骨筋の解説
上腕骨外側面の下部から橈骨茎状突起に付着する腕橈骨筋は前腕の橈側(橈骨側・親指側)を走行する筋肉です。
肘関節の屈曲筋としての腕橈骨筋は、前腕が回外・回内の中間(安静位)にあるときに最も効果的に働き、前腕が回外・回内の状態にあるときには、肘の屈筋としてよりも前腕の回外筋や回内筋として働きます。
腕橈骨筋は橈骨の茎状突起に停止部を持つため、負荷がかかった状態では肘関節の屈筋として強く働きますが、回外筋・回内筋としての作用は前腕が安静位の場合には最も弱くなります。
起始部:
上腕骨外側下部
停止部:
橈骨茎状突起
機能:
- 肘関節の屈曲
- 前腕の回内位から安静位までの回外
- 前腕の回外位から安静位までの回内
腕橈骨筋の起始部
腕橈骨筋の起始部は上腕骨の外側下部です。
上腕骨は長骨に分類され、肩甲骨と肩関節、橈骨と肘関節を構成します。
上肢は上腕骨が一本あり、前腕は二本の骨(尺骨と橈骨)の構造で、下肢も同じような構造で大腿骨が一本あり、その下に二本の骨(脛骨と腓骨)があります。
このような構造だからこそ、橈尺関節による前腕をねじる動き(回外と回内)が可能になり、複雑な手先の動きが可能になっています。
腕橈骨筋の停止部
腕橈骨筋の停止部は橈骨茎状突起です。
前腕の親指側の骨である橈骨は尺骨と橈尺関節、手根骨と手関節(手首)を形成し、腕橈骨筋の回外・回内の動きは肘関節ではなく橈尺関節の動きです。
神経支配
橈骨神経(C5・6)
腕橈骨筋の触診
腕橈骨筋は前腕橈側の表層にある筋肉なので、前腕外側前面で触診が可能です。
腕橈骨筋の働き
腕橈骨筋は肘関節の屈曲と橈尺関節の回内・回外に働く筋肉ですが、前腕の状態により発揮できる力が変わります。
上肢の動きには、肩関節と肩甲帯、肘関節、橈尺関節、手関節が関与し、肘関節と近位の橈尺関節は位置的にも非常に近くにあり、ほぼ同時に働くので混乱を招きやすい部位でもあります。
これらの関節の動きは混同されやすいので、特に肘関節と橈尺関節はそれぞれ独立した関節であると理解しておく必要があります。
肘関節の屈曲
腕橈骨筋が動かす肘関節は蝶番関節に分類され、曲げる・伸ばすといった単純な動きしかできませんが、非常に大きな可動域を持った関節です。
腕橈骨筋の屈曲とは、肘が伸びている状態(伸展位)から肘を曲げる動きが肘関節の屈曲で、上肢の前方にある上腕筋、上腕二頭筋や腕橈骨筋などが肘関節の屈曲に作用します。
一般的に肘関節は0°の伸展位から140~150°まで屈曲が可能で、肘が20°以上曲がると骨格による安定性は低下して、肘関節は内側と外側に不安定になります。
腕橈骨筋は、前腕が回外・回内の中間(安静位)にあるときに肘の屈筋として最も効果的に働くことができます。
前腕(橈尺関節)の回外
腕橈骨筋が動かす橈尺関節は尺骨と橈骨が作る関節で車軸関節に分類されます。
腕橈骨筋の回外とは、下に向いている手のひらを上に向ける動きで、橈骨がその軸を中心にして外側に向かう動きです。
橈尺関節は安静状態から80~90°回外が可能で、前腕が回外・回内の状態にあるときには、肘の屈筋としてよりも前腕の回外筋や回内筋として効果的に働きます。
前腕(橈尺関節)の回内
腕橈骨筋の回内とは、上に向いている手のひらを下に向ける動きで、橈骨がその軸を中心に尺骨側、内側にクロスする動きです。
一般的に橈尺関節は70~90°回内が可能で、回内は主に前腕の前方に位置する回内筋群(円回内筋・方形回内筋・腕橈骨筋)によってコントロールされています。
機能強化
腕橈骨筋は肘関節と前腕の動きで機能強化できますが、肘関節は0°以上は伸展ができなく、回外・回内の動きにも制限があるため、鍛えることは簡単でもストレッチングは難しい筋肉です。
筋力強化
腕橈骨筋は前腕を安静位に固定して、肘関節を屈曲させることで鍛えられます。
ウェイトをもって肘から下を真っすぐに屈曲させてもいいし、前腕の回外・回内運動を抵抗化で最大限(可動域全域)におこなってもよいトレーニングになります。
ストレッチング
腕橈骨筋は肩関節を屈曲位にして前腕を最大に回外位、回内位にすることで多少、ストレッチすることができます。
また、限界まで前腕を回外位にして肘関節を最大伸展することでもストレッチングが可能です。
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