前鋸筋は胸郭を覆うように肩甲骨から肋骨に付着する筋肉です。
上肢の動きに合わせ肩甲骨と肩関節は同時に働きますが、混乱を避けるために前鋸筋のように肩甲骨を動かす筋肉と肩関節を動かす筋肉の働きは別々の物として理解した方がいいでしょう。
前鋸筋の解説
前鋸筋は第1~9肋骨の外側から肩甲骨の内側縁前方に付着する筋肉で、前鋸筋の上部は大胸筋に覆われています。
前鋸筋はボールを投げる動作などで、肩甲骨をわずかに上方回旋させながら外転させる作用を持ち、野球の投球時などでは前鋸筋と大胸筋はともに働きます。
前鋸筋は腕立て伏せのとき、肘を伸ばす最後の5~10°の位置でよく使われ、肩甲骨が後方に突き出している状態(翼状肩甲骨)は前鋸筋の働きが弱っている状態です。
前鋸筋の起始部
第1~9肋骨の外側
前鋸筋の停止部
肩甲骨の内側縁前方
前鋸筋の働き
- 肩甲骨の外転:肩甲骨の内側縁が脊柱から遠ざけるように引っ張る動き
- 肩甲骨の上方回旋:前鋸筋の下部が肩甲骨の下角付近を更に外転させるため、肩甲骨はわずかに上方回旋します。
起始部
前鋸筋の起始部は第1~9肋骨の外側です。
胸郭を構成する肋骨は12対、計24本の肋骨があり、扁平骨に分類されます。
前鋸筋が付着する上から7対までの肋骨は個別に胸骨と接し、真肋(しんろく)とも呼ばれます。
前鋸筋が付着する第8~9肋骨を含む下部の3対と最下部の2対の肋骨は仮肋(かろく)と呼ばれ、下部の2対の肋骨は胸骨に接しておらず浮遊肋骨とも呼ばれます。
停止部
前鋸筋の停止部は肩甲骨の内側縁前方後方から見て裏側)です。
前鋸筋のように肩甲骨に付着して肩甲骨を動かす筋肉の働きは、肩甲骨の各部位を覚えておくと理解しやすくなります。
神経支配
長胸神経(C5・6・7)
前鋸筋の触診
前鋸筋の上部は大胸筋に覆われていて触診は困難ですが、前鋸筋の下部は第5・6肋骨より下の胸郭前外側で触診が可能です。
前鋸筋の働き
前鋸筋は肩甲骨を動かす筋肉で、肩甲骨の外転と上方回旋に働きます。
外転
前鋸筋の肩甲骨の外転とは肩甲骨が脊柱から外側へ離れる動きです。
肩甲骨は鎖骨と肩甲帯を構成し、肩甲骨の動きには胸鎖関節・肩鎖関節・肩甲胸郭関節(滑動部)が関与し、肩甲骨を外転させる筋肉には前鋸筋や小胸筋などがあります。
上方回旋
前鋸筋の上方回旋とは肩甲骨が上方と外側に同時に動くことで、肩甲骨の上方回旋には僧帽筋、前鋸筋などの筋肉が関与します。
機能強化
上肢を使うスポーツではある程度の前鋸筋の強さが求められますので積極的なトレーニングが望ましい筋肉です。
また、翼状肩甲骨などは前鋸筋の機能が弱っている証拠です。
筋力強化
前鋸筋は腕立て伏せの肘を伸ばす最後の5~10°のところでよく使われるため、腕の力ではなく脇の前鋸筋の力を意識して腕立て伏せを行うと効果的に鍛えられます。
また、ベンチプレスやオーバー・ヘッド・プレスなども前鋸筋を鍛える良いトレーニングです。
ストレッチング
前鋸筋は肩甲骨の極度の内転(上肢を限界まで後方に持っていく動き)でストレッチング化可能です。
ウォール・プッシュ・アップという運動(部屋の角に立ち、両腕を肩の高さにあげ2つの壁に圧しつける運動)もよい前鋸筋の柔軟性向上のトレーニングになります。
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